これでいいんかい、国の委員会 Part 5
今年から、総務省の情報通信審議会とか、経済産業省のJISC親委員会とか、よくわからないがとにかく偉い人ばっかりの委員会に呼ばれることが増えている。で、これもなぜだかわからないのだが、上の会に出たら、そのすぐ下の会にも出ないといけないとかで、やたらと国の委員会が増えてしまった。きっとここの人たちは、わたしがNikkei Netで不動の人気?を保つこの連載「これでいいんかい、くにの委員会」シリーズを書いていることを知らないんだろう。
しかし、電波や無線や通信に、これほどたくさんの技術や標準や方式が存在するとは思っても見なかった。とんでもない数の委員会、その下のワーキンググループがある。審議会や親委員会での私の役割は、この膨大な下位委員会の審議検討結果の報告を、「ふむふむ」と言って聞いていればいいので、ま、丁々発止と議論の進む他の委員会よりは楽ではある。
で、いったい、このなが〜い報告をいったいどれがどこまで起きているのか見てみると、ま、半分以上が寝ている。自分の出番が終わった省の方も、各委員会の担当者も、やっぱり寝ている。事務局の省庁席の就寝率?が最も高く、15時時点では8名中7名が寝ていた。一番起きているのは、委員の後ろの「傍聴席」で、ここの人は10名の出席のうち、一人も寝ていない!偉いなあ。
ずっと聞きながら、だんだん私も飽きてきた。いったい、この会合は、何のためにあるんだろう?わざわざ忙しいワタシが、出ていなくてはならないものなのだろうか?偉い委員会に出るってことは、そんなに名誉なことには思えない。こういった委員会の委員長になりました、よろしくって、麗々しい文書を送ってきたどこかの社長さんもいたけど、果たしてそれって、そんなに大層なことなんだろうか?
このたくさんの委員会は、通信の国際標準規格を作っているわけだ。もちろん、ワタシは国際標準の重要性は熟知している。世界で仕事をする上では国際標準を制するものが勝つからだ。だけど、こんなに膨大な結果をいっぺんに聞いても、コメントの出しようがない。問題点は何なのか、日本として何をどう進めないといけないのか、議論の糸口が見つからないのだ。
そりゃ、ここに座ってさえいればいいのだと、わたしも自分の立場はよくわかっている。そして、きっと、お役所の中には、これとおんなじくらい、つまんな〜い委員会や会議がごまんとあって、わたしたちの税金はそれを主催するお役人の人件費に消えていくんだろうな。
委員会に就任するときの事務作業も大変なものだ。なぜだか、国の委員会は、手書き、それも水茎の後うるわしく、見事な墨跡で、「内閣総理大臣」とか「総務大臣」とかからの任命状がやってくる。最初はそのものものしさに驚いたが、今ではどこにどうしまってあるかわからない。でも、これって、ときどき必要になるのだと気づいた。そう、今年のように新たな委員会に呼ばれたとき、履歴書に必要なのだ!
この履歴書も、デジタルでは書けない。手書きだ!当然、赤いはんこは必須である。で、写真も紙焼きを貼るんだそうだ。もはや、大学の講師就任の履歴書でさえデジタルデータにデジタル写真しか扱っていなかった私としては、そのアナログさに驚く。写真の焼き増しをしている間に提出期限が来る。もともと2日しか余裕をおかないほうが悪い。
そりゃ他のみなさんは秘書がやってくれるんだろうけど、うちは事務作業は全員、自分でやることになっているのだ。こういった履歴書のフォーマットも、省庁や自治体で統一してほしい。さっきやっとの思いであちこちひっくり返して、これまでのいろんな省庁の審議会履歴を書いたのに、らら、こっちの省は就任月だけじゃなくて、日も要るの?意味ないと思うんだけど。。。わ、こっちの省はこれまでの就任履歴だけど、こっちの省は今の状態なのね。間違えちゃった。
えっと、ここは昭和で書かないといけないのね。西暦しか頭に入っていないわたしには、年号換算ソフトは必須だ。昭和と平成が混じるとわけがわからない。更に、債主登録依頼票なんとか、というわかりにくさの極致のような申請書もある。役所内で使うことを最優先に考えられた書類なので、どの欄までを私が書くのか、まったく書き方がわからなかった。
こういったフォーマットって、ユーザビリティの概念からものすごく遠いのだ。第一、なんで、金融機関コードなんて書かせるんだろう。支店コードならまだしも、いまどき自分の銀行の金融機関コードを覚えている一般人なんているんだろうか?私も思わず銀行に電話して確認してしまった。
つくづく思う。E-Japan って何のためにあったんだっけ?膨大な会議や、手書きの履歴書を、効率化するためのものではなかったのだっけ?国は日本が世界でも有数のIT国家だといいはる。いったいどこが????自分たちの仕事はそれでどこまで変わったのかね?U-Japanへ進む前に、その前に目標としていたIT利活用がどこまで実現されたのか、きちんと見る必要があるんじゃないのだろうか?