韓国UD会議 4日目
11月11日
アーバンデザインとデジタルテクノロジーという魅力的な題のセッションで始まる。しかし、最初はかなり面食らった。少し遅れていったせいもあり、画面にはシンプルな「線」が一杯書かれているだけだ。いったい、これは何なんだ?しばらく聞いていて、理解した。
俄然、面白くなった。これは、街路などにおける人通りが、形状などによってどう変化するか、綿密なデータをとった上でのシミュレーションなのだ。人が集まりやすい商店街とは?滞在しやすい広場とは?犯罪が起きにくいまち作りとは?川のどこに橋をかけると人の動きを加速する?ロンドンやアジアの街のデータシミュレーションが面白かった。なるほど、デジタルテクノロジーの成果ではある。。。わたしがいうITとは違うが、これも建築では非常に重要な概念だ。MIT Media Lab のTangible Bitsのグループがやっている、建築空間を「触れる」オブジェクトで擬似的に構成し、風や陽光の時間的な流れをシミュレーションするプロジェクトを思い出していた。
次はシンガポールと韓国のまちづくりだ。いやはや、強権国家の見本というのか、ソウルの街中や、シンガポールの町をここまで強気で再構築できちゃうんだ、、、という、新たな驚きだった。しかし、これは日本でそのまま適用できるものでもないと思う。第一、どっちの例からも、市民の参加が全く見えてこない。わたしには、この2つの例は、国家としてどう街作りをおこなうか、という会議で話されるべきもので、UDの会としてはふさわしくないのではないかという印象を持った。どちらかというと、若い世代を中心に考えている。都心はそれでもいいのだ。問題は、高齢化の進む地方において、どう住宅を、まちを、住みやすくしていくかにかかっていると思うのだが。。。韓国とシンガポールの、若さが、多少羨ましくなるときでもあった。さて、日本はどうしようか。
午後はポスターセッションを少しのぞいてからホテルへ戻る。少し買い物に出てみようかな。東大門市場や韓国最大の電気街、龍山へ行ってみるか。地下鉄にも乗ってみたい。歩きながら、また病気(!)が出て、スロープやエスカル、エレベーターの写真を撮って回る。シルバーシートは高齢者のマークをしている。
東大門市場は、以前からの古い市場も健在だし、新しいビルのMallもすごい数で増えている。とにかく人通りが多い。どこもまっすぐに歩けないくらいだ。老若男女、子供連れも多い。エネルギーの固まりのような印象を受ける。立ち食いの屋台も元気だ。あ、たいやきもある。伝統食だけじゃないんだ。でも、わたしは探して「おでん」を買う。しっかり味のしみたおでんは、冬の韓国のたのしみの一つだ。一衣帯水。50円だった。革製品専門のモールは休業だった。残念。でも、優しいお姉さんのいる店で黒のジャケットを買う。COEXモールの5分の1だ。あそこで買わなくてよかった。
外に出るともう真っ暗だ。近所の食堂がどこも混んでいる。あ、どうやらうどんやさんだ。前に来たときも、この韓国うどんは大好きだった。並んで待って食べる。店は女性が8割だ。うどんとゆで餃子を頼む。なぜかこれはマントウと呼ぶのだ。小さなゆで餃子12個とだしのきいたうどんで450円。キムチとなぜかべったら漬けのようなおつけものがつく。
このおうどん、わたしには郷里博多のうどんに限りなく近い気がする。なつかしい。韓国と日本の、限りなく近い関係。電車で座っていると、おとしよりから声をかけられる。韓国人に見えるのかと嬉しくなる。韓国にいると、本当に違和感がない。前からここに住んでいるような気がする。文字や言葉がわからないだけで、だれもが知り合いに似ているような気がする。遠い先祖はやはりここに住んでいたんだろう。
3度目の韓国は、その発展に目を見張り、女の子のファッションに感歎し、ITの進歩にあせりを覚え、そしてUDの必要性を実感した訪問となった。「かつて行ったことがある」それだけでは、もうその国は語れない。いまの進歩はかんがえられない速度なのだ。
最後の飛行機では、日本人の若い女性グループに席をゆずったおかげで、Comdexに行くという若いIT系CEOと友達になった。奥さんは韓国で始めて女性で現代(ヒュンダイ)のディレクターになった人だという。今は奥さんもあるベンチャー企業にいるそうだ。今回は50名の政府ツアーを組んだのだそうだ。政府系30名、企業のCEO20名。平均年齢は30代の半ばか?女性はいないのね、とからかっておいた。
変わって行く韓国。ものすごい変貌の中で、遠来の客に優しい人々のこころづかいが印象に残る。若者も変わる。高齢者はどうしているのだろう?まだ高齢者や障害者のIT利用は進んでいないと聞いた。かつて、一世を風靡した、元老坊のみなさんはお元気だろうか?これは逓信省(日本の郵政省)のOBが作ったパソコン通信倶楽部だ。政府のIT政策に、強力なロビー活動をしていたものだが。ソウル市内に2万軒というインターネットカフェに、高齢者の姿は見られるのだろうか?
今回は会場にずっとこもってしまったけど、できれば次回はもっと市内を歩きたい。気配に触れ、風を感じ、人に接してみたい。もっと五感を使いたい。それはわたしが、この国を好きだと思っているからなのだ。3度目の韓国への旅は、クリアな風と見事な紅葉の中に、どこかなつかしい印象を残して終わった。また会いたいね。