韓国UD会議 2日目
11月9日
朝から早起きして会場へ。古瀬先生に会う。登録してわかったのだけど、参加しないバンケットになぜか1名追加されて30ドル高くなっている。状況を説明して返金してもらった。会場の女子学生たちは、みな、かなり流暢な英語を話す。
オープニングセッションが始まった。韓国はこのコンファレンスに、非常に力を入れているのがわかる。大統領夫人のビデオメッセージまであった。すごい。延世大学の学生さんか、大挙してきている。女子学生が半分を占める。勉強の素材としても、ロードアイランドのデザイン大などに並んでここまで進んでいるのかと感動する。セッションは確かにまじめだし、わかりやすい。入門編、または知識のまとめには、初日はいいレベルだ。全米アルツハイマー協会のトップ、John Zeidelのオープニングスピーチは人間の認知や脳の話から入って、世界に存在する無限のリソース、それは人間のクリエーティビティであるというキーノートだった。会場の学生にあらかじめ配布しておいた「これ何?」と思わせる物体を用いたプレゼンがとてもうまい。種明かしをすれば布でできたフリスビー、子供にフットボールの投げ方を練習させる空洞のあるプラスチック、だったりするのだが。
UIAのトップや、延世大学のKim氏の話も、それぞれ面白かった。建築やものづくりが、MR.Averageのニーズから進んだことの反省、人間の多様性や尊厳を尊重する意識の高揚、そして何より、年齢構成の変化からくる市場の変化への対応から、UDが進むという話は、学生にもUD初心者にも、十分わかりやすい。
RISD(ロードアイランドデザイン学校)の校長先生の話も、教育関係者にはなかなか刺激的だったのではないだろうか?学生が教師とディスカッションを繰り返しながら、さまざまな「デザイン」を身につけていく様子が多くのスライドで語られていた。2000年の6月に、ソニーの堀川さんやUDツアーのみなさんと一緒に訪ねたときのことを、昨日のように思い出していた。ここの美術館は本当に素敵で、地域のおばさまたちのハープ演奏をワインを片手に聴かせていただいたのだった。。。
John Salmenのセッションは相変わらず要点がよくまとまっていて聞きやすい。UDのサンプルが非常にわかりやすい。わたしの分野では、字幕やトーキングサインが出ていた。古瀬さんと、日本でもUDサンプラーのDBを作成する必要があると話す。ボランティアでなく、どこかで予算をとって作成することはできないだろうか?
お昼は古瀬先生と、Jim Mullerと3人でショッピングモールを探索。すごく広い。まるでモントリオールの地下街だ。水族館まである!いろいろお店もあったが、結局韓国料理屋へ。玄米ご飯とナムルの、野菜づくしのビビンバがおいしい。箸がよくできたUDサンプルという午前のセッションでの会話を受けて盛り上がる。IDSA 2000の話を聞くのを忘れて後悔。わたしはものを食べているといつも仕事を忘れる。反省。
午後のセッションは、非常に広い範囲でUDを考える場が提供された。韓国の状況説明に始まり、女性とUD,子供とUD,高齢者とUD,障害者とUD,社会とUD,という切り口でそれぞれ、国連などの報告が行われた。多少、概念的にすぎる話もあったが、UDという概念の幅広さを知る上では、貴重な視点かもしれない。
韓国語のセッションは全体の音量が大きすぎて英語が聞き取りにくかった。同時通訳で情報がとれないと嘆く人の苦労を実感。今回は世界各国からスピーカーが来ているため、英語は必須なのだが、同時通訳の方の英語は非常に美しい。後で少し話したが、留学経験はないという。会場の学生にも何度か話しかけてみたが、数人はきれいな英語を話す。ITと英語教育が進んでいる。今後の国家の発展を、ITと英語学習が基礎だと良く理解している政策の結果だろうか?10年前には、アジアパシフィックのメンバーでの会議は、韓国と日本だけが、シンガポール人などの速い英語についていけなくて苦労したものだったが、もう韓国に関してはその心配はないのかもしれない。さて、わたしもがんばらねば。
夕方はレセプション。入り口になんだか、偉そうな方が立っている。会釈をして通りすぎようとしたらどうも周囲の様子が変だ。慌てて握手をして挨拶をする。どうやら、ソウル市長らしい。ソウルは特別区なので、さしずめ、日本でいえば石原慎太郎というところか?UDの国際会議に、こんな大物が出てくるというのもなかなかすごいことだなあと実感。
しかし、この市長を始め、来賓のスピーチが続いているのに、まじめに聞いているのは一番前のテーブルだけだ。それ以外は、あの雲霞のような学生たちがあっという間に食べ尽くしてしまった。さすがにわたしも、お行儀が悪いなあと思う。目上の方がいるところでは遠慮する、という韓国の美風はすたれてしまったのか?いや、他の国でも、乾杯の音頭まではせめて料理には手をつけないのが一般的かと思うのだが。。。しかし、その、最前列の料理はなかなか美味なものが多かった。韓国料理は洗練されてきている。
その後、東洋新大学の李先生に、市内の「田舎屋」という意味の居酒屋に連れて行っていただく。むかしの韓国の家屋を彷彿とさせるつくりで、壁も和紙でできていて、とてもくつろげた。韓国の家庭料理と、百歳酒(焼酎の一種)を楽しむ。