2009年CSUNツアーレポート:榊原直樹(3)
3月19日 アクセシビリティのセッション、図書館へ
朝一のセッションは支援機器メーカの共同セッション。障害者向けの機器を中心に製造販売していたメーカが、これから高齢者市場に乗り出していくという。そのセッションの中で配られたのが、この冊子(写真)。中を見ると、障害者用の支援機器は高齢者が使ってもこんなに便利!という商品紹介のもの。CSUNの展示会場でも見ることができる様々な支援機器を高齢者が使っている写真と、その説明によって構成されている。CSUNで高齢者に関するセッション・トラックが始まって3年目だが、ようやく根付いてきたようだ。
続いてWebアクセシビリティの世界的なガイドラインであるWCAG2.0に関するセッションに参加。関係者が並ぶパネルで、新しいガイドラインについて報告された。このガイドラインに合わせて日本のJIS X8341-3も更新される。法律でWCAG1.0を自国のアクセシビリティガイドラインとして採用している国も多いので、世界的な影響も大きいだろう。各国がこのガイドラインをどのように取り込んでいくか、今後の動向が気になるところだ。
次のセッションはDAISYに関するセッション。DAISYとはDigital Accessible Information Systemの事で、視覚障害者向けの録音図書をデジタル化する目的で開発されたフォーマットのことだ。現在ではマルチメディア機能を取り込んで、視覚障害だけでなくPrinting Disabilityと呼ばれる様々な障害の人にとって便利なものになっている。このセッションは、Microsoft Wordに組み込めるプラグインの紹介だった。このプラグインを使うと、Wordの文章をDAISY xml形式で保存できるようになる。ネットのNewsで以前から知っていたが、日本語版のWordでは動作を確認できなかったので、とても興味があった。これでDAISYの制作が簡単になり、普及の助けになればと思う。
午後からはWCAGのシニアに関する報告のセッションに参加。意外と参加者が少なく5人しかいない。アメリカの高齢化についての説明から始まり、今後のトレンドを説明してもらう。は発表のベースが研究レポートなので、具体的なガイドラインと言うよりは問題提議に近い内容。人数が少ないので、最後は参加者を交えたディスカッションになる。順番に指名されたので、日本の高齢化についてたどたどしく説明した。
その後加藤先生と食事に。先生はサバティカルを取られて、アーバインに滞在中。日本におられるときに研究会でお世話になっていた。
公共図書館のアクセシビリティを調べている関根さんのリクエストに応えていただいたので、まずは車で郡の図書館へ。
公共と名の付く場所は殆どがADAの範囲なので、もちろん図書館への物理的なアクセスは整備されている。入り口にもスロープや自動ドアなどがあって車イスでも困ることはない。日本でもこれくらいは対応しているのだが、アメリカの凄いところは情報障害の人に対する配慮も十分されていることだ。
一般の書架の中に当然のように文字の大きな「Large Print」が並んでいる。違うフローに行けば、音声図書の「Audio Book」が大量に用意されている。アメリカは車社会なので、運転中にAudio Bookのニーズが高いと聞いたことがある。おそらく視覚障害者以外にも利用している人は多いのだろう。
フロアにはPCコーナーも用意されている。拡大読書器以外にも、音声読み上げソフトが搭載されたPCや、肢体不自由の人が操作が出来るように様々なスイッチが用意されているので、一通りの障害に対応できるようだ。司書の女性が引き出しからそれらの機器を取り出して見せてくれた。
夕食はSun&Moonへ。いつものようにおいしいヒュージョン料理を頂く。店内ではロケーションフリーテレビで日本のテレビ局の放送されているWBCの中継を流していた。アメリカでは自国のチームがあまり活躍していないせいなのか、アメリカチームが出る試合以外はテレビで中継をしていないようだ。この日は日本の勝利。