2006年CSUNツアーレポート:関根千佳(6)
3月22日 その2 今年の製品動向を探る
午後は始まった展示を見る。すでに回り始めた人たちと出会うごとに情報交換だ。「どこが面白い?」「何かいいものあった?」蟻さんのようだな。アンテナを張り巡らして情報をキャッチする。
ざっと会場を回ってみて思う。今年は昨年にもまして、ATとPDAを連動させたアクセシビリティ機器が増えているようだ。例えばEasyLinkという点字のピンディスプレイ製品は、もちろん単体でも使えるが、PDAと連動したり、一般的なキーボードとつながったり、いろいろなニーズに対応できる。ATは個体で動くのではなく、PCやPDAのデータ互換性や拡張性を上手に利用してきているのだ。私たちはこれまで一般機器をUDに、という意図でIT業界を説得してきたが、同様に、AT業界にユニバーサルデザインをわかってもらう必要もあるということなのだろう。
それにしても、今年も、アクセシビリティの会場は「犬だらけ!!!」だ。足の踏み場もない!といいたくなるくらい、犬が、犬が。。。たくさんいる。本当に嬉しくなってしまう。しっぽを踏んでも仕事中は怒らない。ごめんね。このところ、防災のアクセシビリティを研究していて、新潟地震の避難所で盲導犬と暮らしたら、周囲が初めて盲導犬を理解したという絵本を読んだ(震災にあった盲導犬クララ 双葉社)。本はとっても素敵だったのだけど、やっぱり盲導犬って日本では出会う機会が少ないんだなあと実感。日本人って、自分もいつか高齢化するのに、加齢や障害、そしてそれ支えるいろいろな技術やサービスを、身近な場所で理解する機会を奪われているカワイソーな民族だと思う。みんなCSUNに来ればいいのに。
Dolphinという製品も、PDAとの連動を謳っていた。これはもともとは視覚障害者のためのソフトウェアで、PCやPDAで動かせるというものだ。拡大機能、音声読み上げ機能など、視覚障害者が使いたいさまざまな支援技術が、PCでもPDAでも同じように使える。羨ましい限りだ。われわれがデスクトップで使いたい機能は、モバイルでも全く同じ環境を使いたいと思う。視覚障害者だって、一緒のはずだ。デスクトップもモバイルも、拡大や音声もあたりまえに装備されているべきだったのだ。しかし、こういった製品のオンパレードを見ていると、なんだか障害者の環境のほうが進んでいるような気がして羨ましくもある。
例えばMaestroという機器のスペックを見てみよう。このたった4.67OZのWindowsベースのPDAは、Officeも動けばテキスト読み上げもDaisy(音声のデジタル図書)読み上げもできる。キーボードや点字ディスプレイなどのさまざまな周辺装置も付くし、EメールやGPSによるナビゲーションまで付いている。今後はメールやスケジュール管理、計算機に時計、メディアプレーヤーに第二外国語選択の機能まで付くのだそうだ!日本では携帯電話の機能が、どんどんてんこ盛りになっていったが、アメリカではPDAが同じ道を辿っているようだ。ここまでくると、いわゆる技術の成熟曲線そのもので、使いこなせない人も増えるのではないかと老婆心で心配したくなるくらい、高機能である。
デモンストレーターは、当然のように、全員が当事者だ。このDolphinをデモしてくれた視覚障害者は大変優秀だったが、私はその腕に光る美しい腕時計に魅せられてしまった。
それぞれの時間に点字が一個だけついているというシンプルなものだが、点字のタクタイルがデザインとしてもなかなか素敵だ。「結構古いものなんだよ、大事に使っているんだ。」と、デモのお兄さんは嬉しそうに言った。こういうふうに、見える人が見えない人のものをかっこいいと思うようなデザイン、これがユニバーサルデザインなんだけどなあ。
CSUNでデモされているような支援技術が、どんどんハイパーにかっこよくなっていって、「わあ、そのモデル、かっこいい!私も欲しい!」と、ミーハーな私が欲しがるような、そんなものばかりになる未来。ここ、CSUNではほとんどそういう世界になってきているが、さて、日本ではどうだろうか?
企業ブースもいろいろ回った。おお、CANONのブースの立派なこと!何台もアクセシブルなコピー機を並べ、DVDで説明し、そのDVDをお土産にくれるという力の入れ方だ。絵にかいたように美しく、かつ聡明なA嬢が、日本のK氏の友人と聞いて早速話してみる。かわい〜い。テクニカルにも強く、仕事もできそう。思わず写真をとったが、これは未公開にしておこう。来年、みなさん、キヤノンのブースで彼女を探してください。
Adobeも元気だ。数年前から顔なじみのGregが元気にデモをしている。日本でもどんどんバージョンアップするからね、よろしく。と言っていた。どこの企業も、なんだか、508条対応というところを越えて、企業として当然のことをしている、という雰囲気になりつつある。いい傾向である。
夜は、ドコモさん、三菱電機さんと一緒に、マコーミックのシーフードを食べに行く。メニューが少し変わったようで、私が好きだったシーフードシチューがなくなっている。近そうなものを頼んだが、ちょっとイメージが違った。美味しいんだけど、煮込んだカニは食べにくい。周辺は、ものすご〜〜〜〜〜くMessyな環境になってしまう。こういうときは、もう少し上品に食べられるメニューにするべきだった。Yさんや今井が頼んだロブスターのグラタンは最高だった。来年はこれにしよう。このお店はワインも美味しい。で、最後のデザートで、あの伝説の「チョコレートタワー」が出現する。私は壁の一部をいただいただけだったが、榊原は一人で完食した。 「社長、何かアワードでも出してあげたら」の声に、「はい、では、チョコレートタワーもう一個!」と回答してしまった。