2006年CSUNツアーレポート:関根千佳(12)
3月25日 帰国の途は、また食べ物の話!
先発隊を見送って後発部隊も出発する。東大チームはどうやら先へ行ってしまったらしく、少しあせったが、空港で見つかったのでほっとする。しかし、ロサンゼルス国際空港は、大変な混雑である。インスペクションに1時間、チェックインに30分、セキュリティチェックを超えたのはもうぎりぎりだった。いやはや。こちらにお住まいの娘さん一家を訪ねてきたというおばあちゃまのサポートをしながら一緒に走る。お買い物は・・・まあいいや。また今度ね!
もうシートリクエストもなにもあったものではない。3人がけの真ん中で、それも通路側にはでっかいアメリカ人男性・・うう、最悪のパターンだ。ま、しかし、窓際の男性が、なかなかのイケメンで気持ちが救われた。日本食を世界に広めるというお仕事をしているそうで、食のグローバリゼーションに対してずっと話ができて面白かった。アメリカで100年も続く企業というのは、日米の歴史を考えると、実に尊敬に値するものだ。世界中から和食の食材を調達し、世界中に和食文化を広げているのだという。世の中にはすごい会社があるものだな。こういう人から見ると、各国には各国の課題があるようだ。
例えば彼の視点では、日本の有機栽培の基準は、最初だけは厳しいがその後のフォローが甘いのだそうだ。その点、米国は最初はそれほど厳しくないが、後のチェックが大変に厳しいため、何年間も続けて認定を受けるのは大変名誉なことなのだという。まるで日本とアメリカの大学教育の違いのようだな。入学が大変か、勉学が大変か。ま、どっちが学力がつくかは明白なのだが。検査が終わったらあっさりバリアフリー対応を撤去しても、全く悪びれなかった会社もあったよね・・・。事後検査って日本は絶対にないし。
そう言われてみれば、日本のメディアが伝えている米国の食品は、みんな農薬漬けかBSE感染みたいに言われているけれど、実際にはトレーダージョーズのようなオーガニックフードは大流行だし、普通のスーパーでもそういった製品が増えている。レストランも、初日に行った店のように、すごく野菜が美味しいところもある。もしかしたら、食というものに対しては、自給率や国内産業の保護という観点もあり、政府もメディアも、少し偏った情報提供をしている部分もあるのかもしれない。LAに住んでいたころ、日本の新聞で書かれている内容が、アメリカやBBCなどの出してくる内容と微妙に違うことに気づいていた。メディアは一つのチャネルにこだわらないで、複数の角度から物事を見る訓練をしておく必要がありそうだな。特にこれから、情報を選別する目が必要だ。おっと、せっかくだから、舌も入れておこう。私のように、有機無農薬栽培の自家製野菜を食べ慣れると、農薬使用の多い野菜はすぐわかるのだ。生きていくために、五感を鍛えなくては。
ま、硬い話もあったが、実際は、アメリカで日本酒がブーム!とか、今後アメリカで起業するならたこ焼き屋が有望、とか、大変に盛り上がったのでした。なんだか、今回のツアーもやはり食の話題が多かったかも。すみません。
今年のCSUNを総括すると、Agingやユニバーサルデザインがキーワードになってきたと思う。すでにATは、障害者の支援技術という意味を超え、もっと幅広いユーザーに、共通の場で、学びや暮らしや、楽しみを共有するための道具としてみなされてきたようだ。ATの専門家にも、UDという言葉が当たり前の未来として語られ、UDの専門家は、ATをいかに多くのユーザーに使えるUDなものにできるかを競っている。
ATとUDは、決して対立する概念ではない。どちらも、多様な人々のQOL(生活の質)を向上させるためのツールである。衣食住、そして情報とサービスなど、生活にかかわるすべてのものを、ふだんはUDで作られた誰もが参加できる環境で、ときにはATも有効に使って、楽しんで生きてゆく。そんな未来を、CSUNに参加した多くのみなさんが、いつか、自分のため、そして私の楽しい老後のために(!)日本で実現してくれることを期待する。かつて学生としてこのツアーに参加した人が、その後、IT企業に就職し、今年はこの分野の専門家として、再びツアーに参加してくれた。大変に嬉しかった。新しいOriginがこのツアーから生まれつつあるのだ。時代は着実に進んでいると思う。また来年も、CSUNで会いましょう。みなさん、本当にありがとうございました。