2006年CSUNツアーレポート:今井朝子(3)
2.CSUN会議における口頭発表の紹介
2.2 肢体不自由関連の発表
タイトル:Selecting Efficient And Appropriate Access Methods
発表者:Gaylon Ponder
所属:Words+, Inc
一般的な支援機器を使うことのできない肢体不自由者のために開発したシステムの紹介であった。発表は、システムを開発したエンジニアであるGaylonとユーザーのペアで行われた。技術的な発表の前に、ユーザーから「この技術がなかったら、私の人生は全く違っていたでしょう。今では、州政府の会議に出席するための資料をこのシステムを使って作成しています。」といった内容の話があった。次に、Gaylonから開発に関する詳細な話があった。ユーザーは首をわずかに動かせるのみであったため、車椅子につけられた、頭部を保持する支えに付けられたヘッドマウスひとつを用いて選択と決定を行うUIを紹介した。UIは図 2に示すように、赤外線を出す装置とカメラをディスプレイにマウントし、ユーザーの眉毛の上に貼ってある再帰性反射材でできた直径8mm程度の円形のシールから反射される赤外線をトラックする仕組みであった。ユーザーのシールの位置は、図2の右上の文字盤のカーソル位置にマップされ、ユーザーがヘッドマウスを1回クリックするとその位置が選択され、もう一度クリックすると入力されるというものであった。これは、ミサイルを発射する際のユーザーインタフェースを応用したものである。このシステムでも十分利用が可能であったが、ワード1ページ文の文章を作成すると、3000回程度も首を片方に動かさなければならないため、筋肉をバランスよく使えないという問題があった。そのため、頭の左右にスイッチを付けてモールス信号を使えるタイプのものも開発したそうである。また、今回紹介された入力システムでは、眉毛の上に貼った再帰性反射材のシールから反射される赤外線を計測していたが、Gaylonによると車椅子に搭載するシステムの場合、眼底からの反射光を計測するよりも、再帰性反射材のシールを貼った方がシステムとして利用しやすいそうである。その理由は、環境光の変化が大きいこと、利用者がコンタクトや眼鏡をかけること、目の色によっては計測が難しくなるからであった。
Gaylonは見た目も含めて、映画に出てくるような素晴らしいエンジニアだと思った。来年もGaylonの発表があったらぜひ聞きに行きたいと思う。
図2 ユーザーのニーズにチューニングされたUI