2004年CSUNツアーレポート:関根千佳(2)
3月17日CSUN初日 まだ眠い
CSUN初日は、インターネットの父、Vincent Cerfのオープニング講演から始まった。インターネットの進化、今後のユビキタスや情報家電への展開、それとATとのかかわりといった内容で、本人が聴覚障害者であったことから、メールやネットでの情報環境の整備がエンパワーメントに貢献することがよくわかった。 ジョークの多い軽妙な語りだったが、ジョークが多すぎて、背景が見えないとよくわからなくなってしまうことがあり、ちょっと悲しかった。 また、「これもWebでご覧になっていると思いますが」「Webの情報を見ていただいていると思いますが」という前書きが多く、予習をしていないとついていけない印象もあった。 彼のようにネット業界であまりにも有名だと、業界の常識として知っていることを前提に話がすすむのだが、残念ながら日本人の私にはわからないこともある。 このあたりは、有名な野球選手の話をジョークに交えられたときと同じだ。絶対わからない。ま、これは世界共通の悩みだろう。 海外から来た人に、トリビアの泉の「へえ〜ボタン」の話をしたってわからないわけだから。こういった、その時期のその国の一般常識みたいなものを、 影からそっと教えてくれるAR(Augmented Reality)が欲しいとつくづく思う。
9時からセッションに参加する。
Waveという名前のWebアクセシビリティチェッカー、Microsoftの次期バージョンのアクセシビリティといったコースに出たが、とにかく眠い。あまり新しい情報があるように思えないなあと思いつつ、すぐ記憶がとぎれてしまう。初日はほとんど頭が使い物にならない。やっぱり数日前からやってきて、耳と身体を慣らしておくべきだと反省する。
お昼のセッションで、いま共同研究をしている「ユビキタス情報社会のライフスタイルデザイン」(通称やおよろずプロジェクト)の発表を日立の星野さんと弊社の榊原が行う。GPS付きカメラ付きWebブラウザー付き携帯電話による当事者からの情報発信、というテーマは、どうやらショートメッセージがやっと普及し始めたばかりというアメリカでは新しすぎるコンセプトだったかもしれない。この携帯電話の開発では、日本は世界の最先端を言っているなあと実感する。ラインゴールドのスマートモブズではないが、米国人のIT専門家を黙らせてしまうようなアプリケーションが、日本から発信されているのだ。だが、いかんせん、米国では実際にそのデモを動かしてみせることが不可能なので、なかなかその価値が伝わりにくいのではないかと思う。もったいないことである。来年はなんとか映像を使って説明できればいいと思った。セッションは質問も多く、無事に終わった。星野さんは、英語のプレゼンが初めてとのことだったが、落ち着いてきちんと説明しQAに応えていた。榊原は・・はい、去年のクレタ島からは、格段に進歩していたよね。
みなで典型的なアメリカンランチを食べて、午後はワンボタンで動かせる携帯電話、というコンセプトを紹介するベンチャー企業に会う。たしかにアプリによってはシンプルイズザベストでわかりやすくできると思うが、日本のあの多彩なアプリケーションに慣れたユーザーにとって、果たしてここまでシンプルに戻れるかというと、手順的にかなり厳しいものがある。音声でメニューを読上げてそれが来たらボタンを押すという手順は、視覚障害者にはアクセシブルかもしれないが、かなりかったるいものになる危険性もある。だが、考え方は面白い。CSUNでは、こういった奇抜なアイデアをもったひとがときどき接触してきて、意見を求めることがある。セッション会場の外の机と椅子は、そういった説明や商談のためのものだ。全部のテーブルの上にパソコンが乗って、自分のコンセプトをプレゼンする人々の熱気で溢れている。これもCSUNの特徴の一つかもしれない。会議での発表や企業展示をするには至らなくても、新たなコンセプトやビジネスモデルについて話し合う機会でもあるのだ。 夕方は展示をざっと見て回る。今年は昨年よりも展示が増えたようで、広すぎてなかなか目当ての企業までたどり着けない。508条の影響なのか、どこも元気である。羨ましいことだ。夕方から開始されたデモブースをざっと見て回る。今年はいつもの会場だけでは足りなかったようで、もう一個大きな部屋が増えていた。いやはや、もう見て回る時間がないくらいだ。これまで2つくらいだった視線入力のジャンルに、顔全体をフォーカスしてそれで入力する安いインターフェースが出ていて面白かった。かつて鼻の頭をIBMで入力にしているのをテストさせてもらったことがあったが、顔をインプットにする技術はこれからどんどん発展するだろう。 |
夜はみんなでHiltonのレストランで晩御飯。隣のブースでIBMがレセプションをやっていると聞いていたのだが、時間がぶつかったので顔が出せなくて残念だった。