2003年CSUNツアーレポート:関根千佳(10)
展示に関して
今回、機器の小型化が目立った。カナダの会社が出していた、視覚障害者向けGPSは、IPAQを使って音声認識で入力し、音声合成でナビゲートするという画期的なもので、GPSも実に小型でかわいい。
3月17日、CSUNに合わせて発表したという今のモデルでは、まだ周囲の状況を伝える程度だが、6月以降に出す次のモデルでは自分の位置を検出し目的地 を伝えると、最適なナビゲーションをしてくれるという。 更に、工事中などのテンポラリーデータもその都度提供する予定というのだから畏れ入る。日本でもどこか出してくれる企業はないのだろうか?ま、IPAQに おける音声認識や合成がまだまだなので課題は多いが。。学習障害専門のソフトも目立った。Lexiaなど、新製品も多い。マーケットの大きさが理解されて きたのだろう。学習障害そのものに対する理解が増えたことも影響しているが、言語習得中の子供、ESLやわれわれのような旅行者にとっても有益だというこ とが理解され始め、UDで考えれば市場が巨大ということに気づいたともいえる。字幕が歩んできた道と同じだ。今後、この製品群はもっともっと大きくなって いくだろう。
日本でも知育ソフトのようなジャンルで、使えるものがもっと出てきていいのではないだろうか?
視覚障害者機器の小型化、多機能化も目立った。昨年、衝撃的なデビューを果たしたPacMate(点字入力のPDA)は、今年はJAWSを最初から組み込んで電話としても使えるようになっていた。
なんとキーボード版まである!やっぱり、中途失明の方の場合や、ふだん、猛烈なスピードで(それこそブラインドタッチで)キーボードを打っている視覚障害者からすれば、フルキーボードの方がよっぽど入力が速いのだろう。
これにUSBポート、メディアカード、スピーカー、マイクもついて、何時間も持ち運べる。中身はWinCEだし、、当然ネットにアクセスできるのだから、 これさえあれば充分仕事できるじゃないか。パソコンより軽いし電気も消費しない。晴眼者のほうがよっぽどめんどくさいパソコンで苦労させられているんじゃ ないか? 次第に、われわれ目明きの方が「いいなあ、障害者って」と、うらやむ時代が来そうな気がする。いや、こういった機器をお手本に、私だけが充分使えればいい 機器をオーダーメイドできる環境を整えるほうがいいのだろう。
ノキアもアクセシブルな携帯電話を出していた。見かけ上はごく普通のフルキー付きのだが、音声読上げなどがダウンロードできるのだそうだ。
IBMの浅川氏がものすごい勢いで質問していた(ので、使わせてもらう時間がなかった!)。一般の製品の中に、ごく普通にアクセシビリティの機能が取り込める。ネットから無料かまたはごく安い価格で入手できる。そんな時代になったということなのかもしれない。
電子投票のマシンは昨年と変わらない機種が一つ出ているだけで寂しかった。大きな選挙でもない限り、508条の影響はあってもそれほど大きなマーケットの変化はないということなのかもしれない。
視線入力や脳波検出のソフトもいつもながら人だかりがしている。気配を音で感じるというソフトにも、多くの人がトライしていた。
こういう、製品化がどうなるかわからない研究状態のものの、たまの息抜きにはいいかもしれない。なんたって、CSUNでは大半のハード、ソフトが
すでに市販されているものであって、日々、多くのユーザーの批判にさらされているのだ。企業としては嬉しくもあり、気が抜けない日々でもあるだろう。しか
し、市場として成立しているということは、開発者にとってもやりがいのあることではないだろうか?
また、ほほのわずかな力で入力するような装置も出ており、見かけ上はまったく特殊な入力には見えないのだが、実はちゃんとスイッチになっているというのも
試してみた。
どんどん、支援技術は、違和感のない、デザインの美しい、Invisibleなものになっていくのだろう。 多くの最新技術が、いつか、歳をとった私を、さりげなく支える。ユビキタスな情報環境の中で、ユニバーサルデザインで。その萌芽のようなものが、このCSUNの展示会にはぎっしりと詰まっているのだ。夢の途中のようなものが。
会場は相も変わらず、盲導犬と電動車椅子のかたまりである。いつか、日本でもこんな雰囲気の会が開けるといい。CSUNの参加者たちが、いつか、10年か
20年後かに、日本の支援技術やユニバーサルデザインを背負って立つ人になっていて、関根の古希のお祝いに同窓会でもしてくれないかなあなんて、またもや
老後の夢を語りながら、今年のCSUNも終わったのであった。
いつもながら、添乗員は同行せずといいつつ、しっかりお世話してくださるJTB戸塚支店の毛利さん、そして毎年参加してくださる新潟大学の林先生と学生さん、常連のみなさま、本当にありがとうございました。今年は二組の親子も混じり、本当にアットホームでした。
最後に、ツアーコーディネーションをやっていただいた弊社の国保さん、榊原さん、ご苦労様でした。特に国保さん、あなたの英語力にずいぶん助けられました。大学院に進んでもまた来年参加してね。