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セッションの特徴

1.Vender Session の増加

まず、セッションとしてはVender Sessionと明記されているものがすごく多い。
これはたしか、査読がなく、企業がファンドして行うセッションではないかと思うが、非常に多く目につく。しかもマイクロソフトやアドビなどを始め、小さな ベンチャーまで多くのVender Sessionを持つようになった。かつては一般セッションとして出していたトロント大学のJutta教授なども、今 回はどこかの企業と一緒にVender Sessionで出している。
これは、もはや、IT産業におけるATやUDが、大学の研究レベルというものではなく、製品化され、市場で評価される状況になってきたことの現れだと思う。508条の影響もあって、企業がPRしたい状況になってきたからともいえるだろう。
しかしこれは、大学での研究が衰えたという意味ではない。CHIやHCIなどの学会を始め、ユニバーサルアクセシビリティに関する研究はむしろ花盛りである。CSUNが大学研究者のものではなく、企業と消費者の対話の場になってきたということかもしれない。

2.ユニバーサルデザインの理解浸透

ユニバーサルデザインという言葉が、アメリカ人の間からもごく普通に聞かれるようになった。
説明をしている最中に、会場から「それがユニバーサルデザインってものですよ」とコメントがつけられる。 演者も素直に、「そうですね」と認める。こんな光景を何度も見た。プレゼンの最後のあたりで、将来方向としては、よりユニバーサルデザインのものにして行きたいという抱負で締めくくるものも多かった。
ヨーロッパではDesign for All, アメリカではアクセシブルデザイン、そして日本ではユニバーサルデザインという言葉で語られていた概念が、ようやく一本化しつつあるのかもしれない。だが Greggは、「これをUDと呼ぶ人もいるが、私は敢えて、Enhanced and Extended Usability と呼びたい」と、微妙な言い方をしていた。 メインストリームの製品開発の中では、より受け容れられやすいユーザビリティの概念を拡張する方が、得策と判断しているのかもしれない。これはユーザーイ ンターフェースの学会の中ではUniversal Usabilityなどと新たな呼び方をされていることにも呼応するのかもしれない。
私は呼び方はどうでもいいような気もする。私に使えればそれで良いのだ。ロミオもバラも、どんな名前でも構わない。作る人はそんな論争に時間をかけるよ り、私に使えるものを速く作ってほしい。おっとまた脱線してしまった。いずれにせよ、アクセシビリティのメインストリーミング化は今後も加速するだろう。

3.508条の影響

Microsoftの豪華な!セッション

ベンダーセッションの多さも508条の影響だとは思うが、今回、目についたのは、IBMやMSの力の入れ方が、去年と全く違うことだった。どちら も、まるでCHIやSiggraphなどの巨大学会であるかのように、ワインやスナックを振舞って顧客を歓迎するのである。これまでの地味な福祉系学会と いう印象はまったくない。MSは一日大きな会場を専有して結婚式のような花まで飾って、特設ステージも作っていた。
IBMはかなりお金をかけてシアターを作り、特殊撮影のビデオを作り、俳優まで連れてきていた。 内容に関してはいろいろ意見もあると思うが、それにしても各社の熱の入れ方はこれまでとまったく違うものだ。
アクセシビリティが、企業公企業への有力なマーケティングツールになるという理解が進んだ証拠かもしれない。 逆に、今回、GSAなど、政府系の508条に関する発表は目立たなくなっていた。 相変わらず気を吐いているDOJのMs. Dinah Cohenのような人はいるが、DOJのMr. Ken Nakataもいなかったし、Access BoardのMr.Doug Wakefieldも来ていなくて残念だった。戦争が近いので参加を自粛したのかも知れない。ただ、共和党政権になってから米国政府の福祉予算は4分の1 もカットされたというのが、こういうところに影響が出ているのかもしれないと思った。
しかしもはや、508条がどうのと国側が説明するフェーズは終わり、企業側が弊社の取り組みはここまで来ました、と発表するフェーズまで来たというべきだろう。 


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