「2000年 テクノロジーと障害者」会議ツアー
3月24日 (その1) セクション508についての論争
<CSUN本会議 その2 リハ法508条>
今日はリハ法508条について学ぶ。これは政府の調達基準を定めたもので、障害者にアクセシブルでない情報通信機器を、「買ってはいけない」という規定である。もともと1986年ごろから存在しており、主要コンピュータ各社がアクセシビリティに関する専門部隊を設ける直接の動機となった法律だが、昨年春?に改定され、精神規定から、より罰則の厳しいものとなってきた。予定では今年の2月に施行細則案とそれに対するパブリックコメントが出され、8月に施行とされるのだが、実際、3月のCSUNの時期にはまだ出されていなかった。この会は、毎年、質疑応答が飛び交い、聞くほうは大変な会となる。それを見事にさばくのは、全盲の政府高官である。ダグラス氏は、まったく見えないなんて信じられない。だってパソコンの設定から後片付けまで、誰の手もかりないのである。いったい、どうしてここにフロッピーが2枚おいてあるってわかるんだ。。。おっと脱線してしまった。508条は、情報通信機器のアクセシビリティを飛躍的に高めると思われている。政府調達を行った担当者の名前が公開され、アクセシビリティ準拠度合いを、連邦政府に報告する義務が生じたためである。もし、アクセシブルでない機器を調達したとわかったら、市民は担当者を告訴することが可能だ。要するに、政府がアクセシブルでない機器を買わないということは、政府を顧客とする情報処理機器メーカーは、そのような機器を作らないかぎり、入札にも参加できなくなるのである。
今はまだ連邦政府だけだが、次第に、州政府、市町村といった自治体、また公的と名のつくあらゆる団体、そして公的教育機関全体へと、その影響は広まるものと思われる。もともと、米国では障害者支援技術は「教育省」の担当なのであるから、学校への適用は最もありうることだと思われる。
学習障害のクラスなどでも感じたことだが、米国では障害児は特殊教育の狭い範囲では存在していない。一般の教育機関に、散在している。だから、障害児・者向けの製品は膨大な量が出る。1つの県に1つの特殊教育学校をもち、そこにだけ1台の機器が売れる日本とは市場の大きさがぜんぜんちがう。障害児はあらゆる学校、あらゆるクラスに、ごく普通に存在するのだ。だからこそ、教師はこのような会に、障害児支援技術を学びに来る。ごく普通の小学校教師が、である。一回購入すれば、また来年も同じような障害の子が入学してくる可能性は大きいので、投資が無駄だとは思わない。だから価格も安くなるし、みんなで使おうと思うから、製品のユニバーサル化も進むのである。
508条も、考え方としてはその延長上にある。かつては障害を持つ職員のための配慮として制定された法律であったが、いまは情報化社会の中で、公的機関における情報提供先のお客様が、障害を持つことを想定しての法律となった。障害者はあらゆる職場に存在し、またあらゆる場に、市民として現れる。だったら最初からそのような顧客層へのサービス体制を整えておくことは当然のことである、という考えだ。
日本でも、福祉を措置からサービスへ、という意識の転換が行われてきたが、建物や交通に比べて、まだまだ機器や情報においては「企業の社会貢献」という意識が残っているような気がするときがある。高齢者層が広範なマーケットとして認知されるのを、待つしかないかもしれない。