「2000年 テクノロジーと障害者」会議ツアー
3月22日 学習障害など
<CSUN 本会議>
キーノートスピーチは7時半からだ。朝6時すぎに起きる。どうしてアメリカ人はこんなによく働くんだ。Hilton HotelのBall Roomは満杯だ。コーヒーとペストリーをとって席に着く。MicroSoftのスピーチは秀逸だった。録音しておきたいくらいだった。技術の歴史と障害者支援技術の歴史とが、この数十年間、凝縮されている。Make the History!という最後の言葉が印象的だった。
Tomのスピーチも、技術とはあまり関係無かったが、障害をもつさまざまな人々がどのようにしてエベレストに登ったかをビデオで示し、精神力の力を示していた。
9時からセッションが始まる。さて、膨大な中からどれを選ぶか、大変な時期が始まった。参加を決めたものがもしつまらないと、みんなあっさり教室の外へ出て行ってしまう。こんなところも実力主義のアメリカである。日本人はなかなかここまで割り切れないが、実際高い料金を払って貴重な時間を使っているのだから、1時間でも無駄なセッションには出たくないというのもわかる気がする。
しかし、最初に出た学習障害のセッションは素晴らしかった。日本ではまだ学習障害は専門家さえ少ないが、米国においてはなんと人口の15%は学習障害と認定されており、各教育関係者の理解も深まってきている。この数字を示すのに、椅子の上にチョコレートを配ってその数が実はたとえばDislexiaの割合、というように工夫していたのが面白かった。もちろん、研究者は二人とも学習障害者であり、本人の学習過程についての簡単な自己紹介から始まったが、それはこのCSUNではごく普通のことであった。使われている機器やソフトは、あまりに膨大で、初めて見るものも多く、いかに日本ではこの分野の情報が流れていないか痛感した。
たとえば、隣に座った女性と、前の紳士は、実に軽そうな「キーボード」を使っている。4〜5行のテキストが表示されるだけで、後は、要するにキーボードなのだ。スケルトンで色はiMacを意識したきれいなブルーである。これは、米国の中では、必ずしも学習障害者だけでなく、その親や兄弟、先生の間にも圧倒的な人気を博しているという。たしかに軽くて打ちやすそうだし、ファイルは赤外線でPCに送ることができ、バッテリーは200時間ももつという。エコノミーしか乗れない飛行機の、いや、新幹線の中でさえ、すぐ無くなるバッテリーに泣いている私にとっては、夢のような話しだった。結局、機能を完全なテキストエディターに絞り込んでいるからできるのである。この他にも、声での理解を助けるツール、単語予測ソフトのCo:Writerなど、まだまだ日本ではなかなか購入できない製品も多く紹介されていた。