3月28日 Sun Lakes アクティブシニアの生活
Dorisに起こされる。「Chika,ワシントンからあなたの上着が見つかったって電話があったわよ。」寝ぼけ眼でありがと、と返事して、さていったい何時だろうと腕時計をみてびっくり。もう9時半ではないか!ああ、また寝過ごしてしまった。家のように朝日がさんさんと注ぐベッドでは絶対寝過ごすことはないのに、アメリカでは遮光性の高いカーテンや北向きの部屋だったりすると、どうも寝すぎていけない。明日は目覚まし時計を借りよう。
ドリスにこのコミュニティを説明してもらう。海外ではSunCityが有名だが、ここのSunLakeは、アメリカ人の間で人気が高い。今、2万人ほどの引退者が住み、どんどん開発がすすんでいるとのことである。隣はIntelのChip工場である。平均年齢はフェーズごとに違うが、彼らは第3期と呼ばれる開発層に属している。第1期は70代、第2期は60代、そして第3期は彼らのように60より少し前の層が多いという。みな、元は会社の重鎮であったり音楽家だったりと、スペシャリティの高い人が多く、会うだけでも楽しいという。健康に気を使い、フィットネスクラブに通い、地域コミュニティへのボランティアに毎日を使っている。高齢者向けの水着を作るビジネスを起こした女性もいるそうだ。
今回ここに来たのは、実は高齢者のインターネット利用の現状を調査するためである。実際、今回も、ずっとネットでやりとりしてきたのである。彼ら第3期の世代はかなり使っているようで、彼女のゴルフの仲間が情報を交換しているサイトを見せてもらった。どうやらこの地区のイントラネットらしい。何時にどこのゴルフ場で誰がプレイするか、細かく出ている。ソフトボールチームも同様だという。かなり詳細に更新されているようなので誰が作業しているのかを聞くと、これも引退者の誰かにスペシャリストがいるのだという。何から何まで、身内で揃えてしまうアメリカ人のインデペンデントな姿勢がこんなところにも貫かれている気がした。PCやネットを使うのはそれなりに大変ではあるが、コミュニティサービスの一環としてインターネットのクラスがあるとのことだった。
彼女はブリッジの会に参加しているという。仲間の一人に、ご主人が早く寝てしまうので夜の会合に参加できない人がいて、その人はチャットでブリッジに参加しているとのことだ。やっぱりインターネットはこんな風に地域で使われるのが正しいのではないかという気がした。 しかし、第1世代まで含めた地域の情報サービスはやはりテレビであるという。CATVで地域のさまざまなイベントを紹介しているとのことだった。70代以上にはやはりまだネットは縁遠いのだろうか?
午後、Dorisに町を見せてもらう。素敵なゴルフクラブ、レストラン、プール、そしてアートスクール。ゴルフの予約はほとんどがパソコンで行われる。画面は見やすく、キーボードには機能が割り当ててあった。近所のコミュニティカレッジの出先機関となっている教育センターにも行った。パソコンがずらっと並んでいて、かなり自由に使えるようだ。講座も本当の初心者向けから上級者向けまであり、カレッジでもっと最先端のことも学ぶことができる。学校のクラークはこういった。「だって考えてみてください。ここには本当にいろんな方がいらっしゃるのです。中にはコンピュータ会社でばりばりのエンジニアだった人もいますよね。その人たちはここでITリテラシーを教えるコミュニティサービス、それもここのようなクラスルームではなく、その人の家に行って一対一で行う新しいビジネスを立ち上げたりしていますよ。」やっぱりここにも新しいビジネスの芽はあるようだ。
いくつかモデルルームも見せてもらったが、やっぱりため息しかでない。どうして彼らのクローゼットという場所だけで、私の書斎より広いのだろうか。。。。
ここはRetirement Communityとは呼ばれていない。Resort Communityと呼ばれている。しかし、55歳くらいですでに一財産築いた人々が、遊んで暮らす場所である。あまり有色人種はいない。これもまた、多様性を尊重しているかのように見えるアメリカの本音でもある。
しかし、コミュニティのゲートを開けるのも、家のガレージのドアも、車のトランクも、みんなみんな、リモコンで一発である。これは明らかに日本より高齢者対応になっている。実際、みなの話を聞いていると、膝の手術がどうとか、背中に怪我して、とか、健康にかかわる話ばかりである。まだ後30年も生きるのに、こんなに遊んでいたのでは長生きしないのではないかと心配するが、逆に彼らは私たちのことを心配してくれる。どうしてそんなに長い時間をかけて通勤するの?どうしてそんなに真夜中まで働くの?なぜもっと遊ばないの?なぜ人生を楽しまないの?
だって年金は65歳からだし、介護保険も当てにならないし、女性はどんなに働いても年金は増えないし、物価は死ぬほど高いし、と言い訳をしながらだんだん馬鹿らしくなってきた。そうだ。どうしてわたしはこんな日本にいるのだろう?65歳まで過労死するほど働いて、いったい楽しい老後が待っているというのだろうか?私は日本でこんなにアクティブで楽しそうな高齢者のコミュニティをあまり知らない。沖縄にはあるかもしれない。家のローンはまだ3500万も残っている。Sun Lakeの素晴らしい家は、1700SQあっても1500万くらいから買えるのだ。確かに、私は何のために働いているのだろうか?