3月27日 アリゾナへ
朝、8時に目がさめた。夕べは508条の資料を3時まで読んでいた。外は寒そうだ。もう一回ベッドに潜り込んでうつらうつらしていたら、ドアを叩く音がする。クリーニングだ。後でね、と返事をして起きる。10時くらいだろうか。時計を見て驚愕する。な、なんと11時40分!えっとわたしの飛行機は12時55分だったっけ?ありゃ違う。12時34分!わ、もう間に合わない!あらゆる荷物をトランクに放り込み、顔も洗わずにタクシーに飛び乗る。タクシーの中で、革のジャケットと赤い名刺入れを忘れたらしいことに気づくが、もう遅い。いいやどうせアリゾナでは使わないし。シアトルに送ってもらおう。タクシーの運ちゃんはすっとばして10分で空港に着き、なんだか奇跡のように飛行機には間に合った。しかし、いったいどうしてこんな事態になったのだろう。8時に目がさめてから、そんなに長い時間がたったようにはどうしても思えない。不思議で仕方がなかった。
飛行機はダラスへ4時間もかけて着く。ダラスは雨だ、それもかなりひどい雨。到着が遅れる。最初は1時間時差があることに気づかず、あんまり到着が遅れると乗り継ぎの時間に間に合わなくなるのではないかとあせった。十分間に合って、ダラスの空港を散策する。
空港でフローズンヨーグルトを買おうとして、前の若い母親がお金を探して立ち往生しているのに出くわす。あっちこっちのポケットか小銭を集めて出すが間に合わない。長い列ができてきて、すぐ後ろの紳士が「いいよ、この人の分、僕払うから」と言って彼女と子供の分も払っていった。わたしはトッピングなどつけず、シンプルなバニラを買う。うむ、これがヨーグルトとは思えないな。なんかカロリー高そう、と思って食べていると、遠くに子供が大声で泣くのが聞こえる。おやおや、アメリカでもあんなに公共の場で大泣きする子がいるんだ、と思って見ると、なんと、さっきの親子ではないか。母親が立って、自分の分のバニラをなめながら、子供の分のチョコ味を手に持って子供を待っている。だが、子供は泣いて駄々をこねて、そこから動こうとしない。4メートルくらい離れて、二人の距離は縮まらない。
子供は床に頭をこすりつけて泣きわめく。かなり近所迷惑である。母親をまじまじとみる。まだ20歳そこそこかもしれない。つなぎのジーンズ、白いTシャツ。子供を連れていなければ高校生といっても通りそうな雰囲気だ。荷物はたくさん持っているけど、なんだか、飛行機に乗ってどこかへ行くという切羽詰った雰囲気がないことに気づいた。さっきのヨーグルト、溶けてしまうので母親は子供の分も食べてしまう。子供はまずます泣きわめく。やっと母親に近づいてチョコ味を受け取った。子供の服がかなり汚れている。どうやら、この母親、急いでいる人の多い空港を狙ったたかりの類のような気がする。ま、払ってもらうのが5ドルくらいだからかわいいものではあるが。こうやってときどき空港で何かにありついているのかもしれなかった。可愛い顔をしているのに瞳の暗い母親と、愛情に飢えた泣き方をするその子供が気になっていつまでも見ていた。
若くして子供を持つことが、必ずしも幸福にはつながらない。そんな例のようにも思えた。
フェニックス行きの飛行機は30分遅れで到着した。31という席は一番後ろで、全く落ち着けなかった。隣は若いカップルでいつもべたべたしていたし、反対側は食料倉庫で後ろはトイレなのでいつもだれか人通りがあった。なんでこんな席なんだ。。。。
アリゾナには初めて来た。チャックとドリス、なつかしい顔に会えた。彼らは私と連れ合いが12年前にLAにいたときの友人である。54歳でリタイアし、しばらくはITコンサルタントをしていたが、今では地域コミュニティへのサービスに徹しているという。彼は地域のソフトボールクラブの運営、奥さんのドリスはゴルフチームの運営に携わっている。
家は天井が高く、非常にシンプルであるが美しいインテリアで、赤い砂の土地とよくマッチしていた。可愛いお部屋でゆっくり休む。とても静かだ。。。