2002年CSUNツアーレポート:関根千佳(6)
3月22日
今朝はデモ会場を超特急で見てまわる。相変わらずの熱気と興奮、そして何より、デモ担当の障害者たちの楽しそうなこと!コミュニケーションエイドの販売員は、ジョークをちりばめた会話で周囲を笑わせる。なんだかディズニーランドでミッキーやミニーと会話しているような、楽しい異文化コミュニケーションだ。この、底抜けの明るさが好きだから、わたしはカリフォルニアが忘れられないんだろうな、と、ふと思ったりする。電子投票のシステムもアクセシブルになっていた。フロリダは苦い経験だったがおかげで機器のユーザビリティが向上すればそれは歓迎すべき動向だろう。
今年の機器展示は支援技術のUD化を予感させるものだった。点字のピンディスプレイやコミュニケーションエイドは限りなくPDA化し、デザインも洗練されてきている。一昔前の、障害者向けのかっこ悪い機器ではなく、障害者だけが特別に使える(!)超かっこいい機器としてデザインされ始めているような気がする。「俺たち見えない人間にはこれってクールな機器だと思わないかい?見えるやつには、ディスプレイがないから不便だと思うんだけどね。」こんなエスプリの効いた謳い文句に、苦笑しながらも、いいな、と思う。ここでは、誰もが素敵な市民だ。見えないとか聞こえないとか、手足が動かないというのは、顔が小さいとか足が長いといった、各人の性質の一部にしかすぎない。そしてその性質は、誇るべきかっこよさとして、PRしてよいものなのだ。支援技術は、それを演出する小道具だ。長い足を素敵に見せるジーンズのように、その障害者しか使えない機器は、周囲の人間の羨望の的だ。小型で省エネで、自分になじんでいて、長時間使えるなんて!
UDはこれまで一般製品を障害者に使えるように努力してきた部分が大きい。しかし、ここにある支援技術のかっこよさを見ていると、支援技術をUD化することのほうが、面白いのかもしれないという気もしてくる。ま、これは支援技術の市場が成立しているアメリカだからだよ、と、私もわかってはいるのだが。URCが成立する素地は、もう充分なのだ。
午後は関根のわがままを聞いてもらって、お気に入りのサウスコーストプラザへ行く。相変わらず、パワーショッピングで数点の洋服を一気に買い込む。私は日本国内では普段着しか買わない。私くらいの年齢になると、きちんとした仕事着を探すなら、アメリカのショッピングモールのほうがずっと品揃えが多くて便利なのだ。絹のジャケットなど、日本だと変にドレッシーになってしまい、とてもビジネスには使えない。60代の方でもしっかり働いているアメリカでは、私の倍のウエストサイズでもちゃんとしたビジネススーツが存在する。袖は多少長いが、これは日本に帰って手直しするので問題ない。モール内は完全なユニバーサルデザインで、階段とスロープが美しく調和し、カフェの入り口もスロープなのに全く違和感がない。ベビーカーも車いすも、もちろんさまざまな年齢やニーズのある人間も、自然に買い物が楽しめる設計になっている。マンゴーのスムージーを作ってもらって、みんなの戦利品を情報交換しながらホテルへ戻った。
夜は、ツアー恒例となった、マンハッタンビーチのSun & Moon Cafeへ行く。30人もの団体を金曜の夜に受け入れてくれたタンさん&ジュンコさんに感謝しながら、料理とワインを堪能した。本場ベトナムでさえこんなに美味しくは無いだろうと思えるベトナム系の前菜、生春巻き、絶品のフォー(ベトナムの米粉うどん)に始まり、和食へ進む。て絶妙な味わいの巻き寿司の数々、、、最後は特製チャーハンまで出た。もう食べられないだろうな、、、と思いつつ、つい、手が出てしまう。本当に、アメリカの中でこれほどうまい店はそんなにないんじゃないか、と来るたびに思う。タンちゃんの、ビール一気飲みのパフォーマンスもすごかった。East meets West. どこまでも、南カリフォルニアである。こうして、ロサンゼルス最後の夜は、素敵なビーチと感動の美食とともに更けていった。