2002年CSUNツアーレポート:関根千佳(3)
3月19日 プリカンファレンス
朝食後、午前中のセッションをとっているTさんが出ていったあと、しばらくプログラムを読んでいたが、そのまま眠ってしまう。眼が覚めたらもう12時だった。やばい。急いでシャワーを浴びてコーヒーを淹れ、1時半のセッションへ向かった。Going Codelessというこのセッションは、昨年から出ているものでワイヤレステクノロジーの状況を整理して知るには良いコースだと思う。ただし、今年は参加者がかなり少なかった。せっかく来た人も「寒い!」といって出て行ってしまうし。このくらい人数が少ないと、最初に自己紹介から始まる。なんでこの分野のテクノロジーに興味があるのかを話せという。わたしは、ワイヤレステクノロジーがUDの良いサンプルであるからと答えた。だって、寒い冬の朝、わたしはとってもLAZYになるのよ。なぜかこれが受けてしまい、あとから何人かが名刺交換にきてくれた。ワイヤレステクノロジーを支える電波、赤外線、Bluetoothなどの説明を皮切りに、キーボード、マウス、マイク、スピーカーなど、ワイヤレス製品の実例を次々とデモしていく。
後半は、PDAのアプリケーションが面白かった。学校で使うことを想定し、データ収集に持ち出したり、先生側のPCで生徒からの回答を受けて瞬時に集計し、理解度に応じてカリキュラムを柔軟に変更させたりといった使い方が披露された。考えてみればWindows CEを積んだモバイル端末なのだから、このようなアプリケーションを組むことは簡単なはずだ。LinuxでJavaアプリであっても結果は同様だろう。Compaqの新しいPDA、iPAQは、508条の影響を受けて出されたもので、アクセシビリティへの配慮もある。
もちろん手書き文字認識もできるし、デモ機にはViaVoiceと音声読上げソフトが入っていて、まさに小型のJawBoneのように、まったく非接触で入出力ができる。PDAのCPUがどんどん上がっていけば、可能性は無限だと感じさせるセッションであった。
インターナショナルレセプションは相変わらず華やかなゲストが多い。ま、私にとっての華やかさとは、かっこいい障害者のことを指すのだが。WAIのリーダー、Judy Brewer, Sun Microのアール・ジョンソン、Compaqのマイケル竹村、DPIのデボラ・カプランなど、業界をリードしているきら星のようなメンバーが勢揃いしていた。昨年引退したHurry Murphyも、もちろん来ていたし、Gregg Vanderheidenとも12月の来日の件でしばらく話した。
同じテーブルに座ったグアムからの参加者は、日本語が上手で楽しかった。最後に、車椅子に乗った小さな、しかし存在感のある女性が日本人グループに話し掛けてきた。わたしはデザートをせっせと食べていたので会話に出遅れたが、名刺をいただいてショックを受けた。Judy Human?え、これが、あのADAの基礎を作ったという伝説の女性なの???わたしの目は、ハート型になっていたらしい。なんだか、夢中で話していた。樋口恵子は知っているよね?うんうん、選挙の応援をしたよ、(って返事が英語でできなかった。ぐやじい。)長瀬修も知ってる?あ、長い友だちだよ。なんだか、嬉しかった。アメリカの障害者も、最初から今のような環境を手にいれていたわけじゃない。JudyやGreggのような人々が、30年もかけて変えてきた結果なのだ。CSUNに来るたびにそのことを思い出す。我々が見ているアメリカは、先人が切り開いた結果なのだ。ならば、私たちは、うらやむだけでなく、日本でも道を開かなくてはならない。30年後のために。