2007年CSUNツアーレポート:関根千佳(7)
3月22日 508条もIBMも中国も面白い
その後もたくさんセッションに出る。たまにははずれることもある。508条に関連したパネルにも出たが、パワポもないので、寝てしまった。セッションの後で、司会をしていたJim Tobiasをつかまえて、キーポイントだけおさらいをしてもらう。認知障害への対応などは、前に抜けていたものを追加しただけで、そんなに大きな変更ではないらしい。 キーはTestabilityなのだそうだ。日本でも適合性評価がキーなので流れは同じかもしれない。調達基準にアクセシビリティへの配慮、という要件を出すとしても、それを誰がどうテストするのか?企業側の自己申告でいいのか、調達側はどう評価するのか。考えてみればたくさんの課題が残っているのだ。次回の508条の動向に注目したい。
IBMのセッションも面白かった。米国教育省と組んで、理系の大学の中に、アクセシビリティに関するノウハウを、オープンソースとして整備していき、多くの学生やエンジニアが利用できるようにするというプロジェクトを紹介していた。これは正しいアプローチだと思う。アクセシビリティを、後付で追加しても、根本的な解決策にならないのは、「バリアフリー」の限界である。コンピュータサイエンスを学ぶ全ての学生が、アクセシビリティを常識の一部として知っていれば、彼らが実社会で作り出すITも、大学で行われる研究や教育も、もっと最初からアクセシブルになる。それがユニバーサルデザインの社会を作り出す、一番有効な方法なのだ。
IBMは、ODF(Open Document Format)のプログラミングコンテストも行っていた。世界中の大学から応募が来たそうである。最優秀の学生を3人、CSUNに招待してあった。中国の精華大学から来たという学生など、なんだか、少し話しただけで、わ〜、この人、賢そう!!!とひるんでしまいたくなるほど、頭が良さそうだった。でも人当たりもよく、オタクっぽくなく、大変にセンスもいい。うーむ、精華大学の学生は素晴らしいと聞いてはいたが、今後が大変に期待できそうだなあ。こうやって、アクセシビリティの情報ソースを、オープンソースとして世界の大学をつないで連携していくという。いい企画だが、日本の大学はどんな反応なのだろうか。少し気になった。
インターナショナルレセプションも良かった。昨年は少し寂しかったが、今年はIBMがスポンサーしてくれて、大変な盛り上がりだった。世界のキーマンと、海外からの参加者が直接話せるいい機会なのである。行かないのはあまりにももったいなかった。IBMに招待されている3人の大学生も来ていた。車椅子や盲導犬を連れた多くの大学教授や研究者にあって、どんな印象を持ったのだろうか?
わたしはITIのKenと、TEITACの状況や、互いの近況についてかなり長く話した。彼とこんなに長く話すのもひさしぶりだ。いつか、EUのインマ女史と同じように、日本に来て講演してもらいたい人のひとりである。2年前に「スローなユビキタスライフ」という小説を出版したことを話すと目を輝かせた。彼も物書きになりたかったのだそうだ。小説のサイトは会社とは別のドメインにしたほうがいいかも、とアドバイスをくれた。そうかもしれない。
夜はいつもながら、鶴本部屋で盛り上がる。毎晩のこの大騒ぎが、いや、情報交換があるからこその弊社ツアーなのである。