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W4A2008北京レポート(7)

Session 2 - User Agents and an Accessible Rich Internet Application

Technical Paper: The CISNA Model of Accessible Adaptive Hypermedia

Robert Dodd, Steve Green and Elaine Pearson

Robert Dodd さんはインタフェースの専門家で、Webをモデル化することに関心を持っているらしい。ドキュメントのモデルとして、"Dexter Model of HyperText"、それを拡張した"Amsterdam Model"の紹介があり、それらを踏まえた「5階層 CISNA Model」を提案している。CISNA modelは、次に示す5階層でモデル化している。

  • Adaptation Layer
  • Navigation Layer
  • Semantic Layer
  • Inventry Layer
  • External Content

予稿ではさらにそれぞれのレイヤーの解説が続くが、どうも先行研究などをじっくり読まないと理解できそうもない内容だった。昨年翻訳した、Webアクセシビリティの P346で、Cristian Heilmann は構造(HTML)-表現(CSS)-ふるまい(JavaScript)という3階層のモデルを提案している。これはいわば現状のWeb技術に合わせた実 用的な分類で分かりやすいのだが、このCSINAモデルにはもっと深遠な意味がありそうだ。もう少し、このモデルを勉強してみる価値はありそうである。

Dextor Model
Halasz, Frank. 1994. "The Dexter Hypertext Reference Model." In Communications of the Association for Computing Machinery 37 (2), February 1994: 30-39.

Technical Paper: A Syntactic Analysis of Accessibility to a Corpus of Statistical Graphs

Leo Ferres, Petro Verkhogliad, Livia Sumegi, Louis Boucher, Martin Lachance and Gitte Lindgaard

この発表は、Excelのグラフからlongdesc属性に記述する内容を自動生成するというアイデアに基づいたiGraph-Liteというツー ルの紹介である。このツールは、Excelのアドインとして動作するものだ。グラフのタイトルやX-Y軸、複数のグラフのカテゴリ名などを自然言語処理で 類推して、XMLファイルに書きだし利用するというわけである。確かに、シンプルなグラフなどではうまくいくが、そもそもグラフによって表現したい事実と いうのは、実際には同じグラフであってもその文脈では変わってくる可能性がある。発表者も、いろいろな制約条件は理解しているようで、まだ課題が多いとの 認識のようであった。私の理解では、「グラフ」というものが情報としてどういう「プロパティ」を持っているかといった視点からアプローチするのではなく、 人がグラフを見て処理するときにどのように認知しするのかという視点から切り込んだほうがうまくいくような気がする。たとえば、視覚認知の特性を考えて も、グラフの階層構造、局所的特徴と全体など、いくつかの視点が導入できるのではと思う。

Communication Paper: A Web Compliance Engineering framework to support the development of accessible Rich Internet Applications

Carlos A Velasco, Dimitar Denev, Dirk Stegemann and Yehya Mohamad

ARIA開発にも対応したWebの適合性評価フレームワーク"imergo"の紹介だった。WCAG1.0、BITV、Section 508に対応している。評価する内容を設定したり、RIAに対応したテストが行える枠組みになっているとのことだった。

Communication Paper: Grouping hyperlinks for improved voice/mobile accessibility

Alex Penev and Raymond K. Wong
リンクをクラスタリングしてグループを見つけ出して、それらにまとめてアクセスできるようなメカニズムを提供しようという研究。こういうことができている と、音声アクセスや携帯アクセスに便利というシナリオ。まず、リンクの「アンカーテキスト」に「対象URL」「リンク先コンテンツ」の手掛かりに、その DOM上の位置関係も計算して分類を行う。

このように、リンクの関連性を使って階層構造化しアクセスを改善するという方法は、現時点では有効かもしれないが、ARIAのセマンティックなマークアッ プが普及してくれば、リンクの集合を "menu" とマークアップするだけで事は済んでしまう。研究としては面白いのだが、日の目を見ることはないのではないかという気がする。
この研究は、VSM(tf, idf)クラスタリングを使うことがむしろ目的なのかもしれない。

Communication Paper: AxsJAX: A Talking Translation Bot Using Google IM

Charles Chen and T.V. Raman

あまりまじめに話を聞かなかった。Google IMはARIAを実装しているのだそうだ。それから、翻訳 bot が面白い。gtalkで ja2en@bot.talk.google.com などを呼び出すと、チャット画面で日本語を英語に翻訳してくれる。

画像:gtalkの画面キャプチャー 画像:gtalkの翻訳された画面キャプチャー。en2jaの翻訳botを使うのことだった。