Home » レポート » Webアクセシビリティ » W4A2008北京レポート:梅垣正宏 (研究員) » W4A2008北京レポート(9)

W4A2008北京レポート(9)

Keynote 2 − 高齢者のWeb利用とアクセシビリティ

W3C/WAIの Shadi Abou-Zahra 氏が "Looking To The Future: Web Accessibility, Ageing, and Emerging Web Trends" というタイトルで、2つ目のキーノートスピーチを行った。Shadは、WAIが欧州のファンドで立ち上げたWAI-AGEというプロジェクトの責任者で、 このキーノートもその内容が中心だった。話題は広かったが、WAI-AGEに絞って紹介すると、次のような話題が中心だった。

  • WAI-AGEでは高齢者のWeb利用におけるガイドラインを中心に、文献調査を行っており、間もなく公開の予定である
    (すでに公開されている Web Accessibility for Older Users: A Literature Review)
  • 共通して論文が指摘しているのは、色のコントラストとフォントサイズ、ナビゲーションとオリエンテーション、予見可能なコンテンツ、リンク・見出しの一貫性などである
  • 多くの問題はユーザビリティ上の問題とオーバーラップしている
  • コンピュータのスキル不足も問題になる、もっと簡単に使えるブラウザが必要
  • 高齢者は支援技術を使わない
  • 症状が変化するし、複数の障害を持つこともある
  • 認知障害との共通性も見られる

このような文献調査を通じて、WCAG2.0 などのガイドラインとの共通点や相違点を探り出すことが、WAI-AGEプロジェクトの目的である。高齢者向けのガイドラインなどを開発するという方向ではないらしい。今後の活動に注目したいプロジェクトの一つだ。

なお、シャディさんは日本での高齢者とWebに関する研究も探しているとのことなので、興味のある方は連絡を取ってみてほしい。