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スローなユビキタスライフ感想文

新 誠一 氏  東京大学大学院 情報理工学系研究科 助教授

仲間に小説家がいた。それが、この本を読み終わって感じたことだった。複線があり、話はトルファンまで掛け馳せる。研究プロジェクトから生まれる啓蒙書は 小説以 前が普通である。しかし、この本は人の心が書かれている。新しい技術が理解できる とともに、感情移入ができる。惜しむらくは悪がでてこないこと。それは、作者の心が優しすぎるためかもしれない。

八百万神のような多神教は日本だけでなく、本書にあるアジア、そしてギリシャや ローマにも見られる。人くさい神たちである。それらの神は力の集中化という歴史の 中で一つの神に集約化されていったのかもしれない。技術の発達が、多数決ではなく、少数意見の尊重を可能にし始めた。それこそが著者の専門とするユニバー サルデ ザインであろう。個人は皆違う、しかし、誰もが使える機器の登場。八百万神の復活であり、愛の復活でもあろう。